わたしのHygge #05


もともと、着物に対して憧れる気持ちはあった。なにせ昭和顔なので、洋服より和服が似合うのだ、自分で言うのもなんですが。けれどもその一方で、難しそうだとか、お金がかかりそうだというイメージも拭えず、「いつか自分で着られるようになりたい」「いつか、いつか」と有言不実行を続けること十数年。ついに重い腰を上げたのは、2019年春、友達に「着物で美術館に行こう」と誘われたのがきっかけでした。 


一歩踏み出してみると、母からお下がりをもらえたこともあって、意外とハードルは低かったかも。足りないものはネットやリサイクルで安く揃え、YouTube先生に教わりながら自主練。要は洋服と一緒で、フォーマルとカジュアルがあり、安く抑えようと思えば抑えられるし、普段着ならTPOも何もなく着方は自由なわけです。というわけで、今では時折自宅でも着物で過ごしています。

時代劇を観ると、かしこまった正絹の着物を身に着けているのは、お城に住むお姫様くらい。町娘なんかは、麻や木綿を着て、元気よく家事や畑仕事、商売に勤しんでいます。帯も半幅帯という簡易なタイプが多く使われ、帯揚げや帯締めが必要になるお太鼓結びなどはかっこいいけれど、必ずしもああでなくちゃいけないというわけではない。つまり、ひとくちに着物と言っても、じつにいろいろあるのです。 


今日のわたしは、兵児帯(へこおび)という、本来は浴衣に合わせるぺらぺらの柔らかいものを選びました。ざっくり蝶々結びをすればよく、後ろは比較的ペタンとさせられるので昼寝だってOK! 春から初夏にぴったりの薄手のウール着物は、洗濯機で普通に洗えます。足元は、洋服の時にもたまに履く足袋型ソックスにし、着物の下にはステテコを履いているので足捌きもスムーズ。これなら、お風呂掃除以外ならたいていのことはできちゃいます。


さて、今日は保存食置き場の整理。場所も取り出しにくい台所下から、目に入りやすい食器棚のいちばん下に移しました。作業中、何度も立ったりしゃがんだりをくり返したけれど、着物のせいで疲れやすいなんてことは一切なし。袖が邪魔になったら、手芸屋さんで購入したリボン(長さ2mもあれば十分)でたすき掛けをして、難なくクリアしました。

ちなみに、わたしは普段猫背になりがちなのですが、着物の時は帯がほどよく腰を支えてくれるので、自然と姿勢がよくなります。だからかえって疲れにくい。食べすぎ防止にもなったりして。あと、本を読んだり、音楽を聴いたりするのも、着物だとひと味違っていいですよ。



●おすすめの本/中原淳一『きもの読本』(平凡社)


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信藤舞子(ライター) 

北海道出身、東京都在住。月刊『散歩の達人』(交通新聞社)など、主に街歩きに関する媒体で執筆中。三度の飯より甘いものが好き(飯も好き)。着物については初級者で、まだ月に数回着る程度だが、将来的には昭和のおばあちゃんのように日常着にしたい。


Hygge-あたみらへん-

〝HYGGE・ヒュッゲ〟とはデンマーク語で 「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のいい雰囲気」 を意味する、他の国の言語では置き換えられない言葉。 そんな居心地いい何かを探求しながら、 あたみらへん(熱海、伊豆、湯河原、小田原、函南、沼津、三島etc...)の ヒュッゲな人やモノ、コト、暮らしを提案・紹介していくzine。 hyggeatami.info

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